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スタートアップへの転職を考えているエンジニアの方、「リスクが怖くて踏み出せない」という人は多いと思う。私もそうだった。
大手製造業で年収890万円をもらいながら、「このままでいいのか」という感覚がずっとあった。結論から言うと、スタートアップに移って年収1250万円になり、今は1350万円。後悔はしていない。ただ、「スタートアップは夢がある」という話だけを信じて飛び込むのは危険だ。この記事では、実際に大手からスタートアップに移った私が、リスクとリターンを数字で正直に話す。
大手890万を捨ててスタートアップ1250万を選んだ日
転職したのは30代前半の話だ。当時の私は大手製造業のITシステム部門にいた。年収890万円、福利厚生は完璧、職場環境は安定。傍目には「勝ち組」の典型みたいなキャリアだった。
でも、正直なところ、仕事が面白くなかった。意思決定が遅い、承認フローが長い、エンジニアとしての技術的な成長が止まっている感覚。それが一番きつかった。
スタートアップからオファーが来たのは、LinkedInで声をかけてもらったのがきっかけだ。最初は話半分で聞いていたんだが、年収提示が1250万円という数字を見てから本気で考え始めた。当時の年収の約1.4倍だ。
でも年収だけで飛びつかなかった。理系気質で「期待値計算」が好きな私は、スタートアップ転職のリスクとリターンを徹底的に調べてから決断した。
スタートアップ転職の4つのリスク:倒産・残業・制度未整備・年収不安定
正直に言う。スタートアップには本物のリスクがある。
1. 倒産リスク
国内スタートアップの5年生存率は約15〜20%という数字がある(出典: 中小企業庁)。「Series Aを調達済み」でも潰れるときは潰れる。私が選んだ会社は調達済み・既に黒字化の手前というフェーズだったが、それでもゼロリスクではなかった。
2. 残業・過重労働リスク
スタートアップは人が少ないので、一人当たりの業務範囲が広い。エンジニアでも採用、採用、採用の手伝いまでやる羽目になることがある。実際、最初の半年は月80時間近く残業していた。大手のころは40時間以下だったのに。
3. 制度未整備リスク
育休・産休制度があっても運用されていない、経費精算の仕組みがない、評価制度が曖昧など、大手では当たり前のことが整っていないことがある。「制度はあります」と言われて入ったのに、前例がなくて運用されていないケースは要注意。
4. 年収の不安定リスク
業績連動の賞与、ストックオプション頼みの報酬設計になっていると、会社の調子が悪い年は年収が大幅に下がることがある。私の場合は固定給ベースが大部分だったので助かったが、「SO(ストックオプション)込みでこの年収です」という会社には注意が必要だ。
スタートアップ転職の3つのリターン:年収・裁量・市場価値の上がり方
リスクばかり話してもフェアじゃないので、リターンも正直に書く。
1. 年収の上昇幅
大手では「査定で5〜10万円アップ」がいいところだった。スタートアップに移ったら初年度から890万→1250万。その後も毎年見直しがあり、今は1350万円。上がり方のスピードが全然違う。
2. 裁量と技術的成長
一番大きかったのはここだ。大手では「承認が降りたものだけ実装」だったが、スタートアップでは「この技術スタックにしよう」という決定を自分でできる。アーキテクチャ設計もチームビルディングも全部自分ごとになる。正直、エンジニアとしての実力はこの3〜4年で大手時代の5〜6年分以上伸びた感覚がある。
3. 市場価値の上昇
スタートアップで幅広い経験を積むと、転職市場での価値が上がる。私も今のポジションになってから、ビズリーチや LinkedInでスカウトが月10〜15件くるようになった。大手にいたころは2〜3件だったのに。「次の手」が常に持てるという安心感は、精神的に大きい。
ストックオプションの現実:夢か幻か、数字で見る期待値
スタートアップ転職で必ず話題になるストックオプション(SO)。夢があるのは確かだが、期待値で考えると冷静になれる。
| フェーズ | IPO確率(目安) | SO行使益の現実 |
|---|---|---|
| シード | 3〜5% | ほぼ期待しない方が正解 |
| Series A | 10〜20% | 宝くじ程度に思っておく |
| Series B以降 | 25〜40% | 期待値としてはある |
| プレIPO | 50%以上 | 現実的に計算できる |
私が受け取ったSOは「あればラッキー」程度に考えている。SOを年収換算して「実質これだけもらってる」という会社の説明を真に受けた瞬間に判断が鈍る。固定給ベースで生活設計して、SOはボーナスの可能性があると捉えるのが正解だ。
大手→スタートアップで後悔した人・しなかった人の分岐点
周囲の転職者を見ていると、後悔する人としない人には明確なパターンがある。
後悔しなかった人の共通点
- 技術力・スキルを理由に選ばれてスタートアップに入った(年収目当てだけじゃない)
- 「大手の安定」より「自分の成長」を優先できた
- 会社のフェーズと自分のリスク許容度を事前に調べた
- 倒産しても食えるスキルが既にあった
後悔した人の共通点
- SOや高年収だけを見て飛びついた
- 「若いうちに経験を」という漠然とした理由で選んだ
- 大手の福利厚生・制度を当然のものとして考えていた
- スタートアップの業務範囲の広さ(雑用含む)に耐えられなかった
私の場合、2回の転職でエンジニアとして一定の実績を積んでいたので、「スタートアップが潰れても次がある」という確信があったことが大きかったと思う。
「このスタートアップは危ない」を見抜く5つのチェックリスト
オファーが来たスタートアップが本当に大丈夫かどうか、私が実際に確認したポイントだ。
- 財務状態を必ず聞く: 「次のラウンドまでのランウェイ(資金持続期間)は何ヶ月ですか」と直接聞く。「2年以上」と答えられない会社はリスクが高い
- 月次売上と成長率を確認: 「MRR(月次経常収益)の推移を教えてもらえますか」と聞く。開示を拒否する会社は怪しい
- 既存エンジニアのLinkedInを確認: 在籍期間が短い人が多い会社は離職率が高い
- 創業者のバックグラウンドを調べる: 連続起業家か、業界経験があるか、調べれば出てくる情報は全部調べる
- 面接で出てきた数字をファクトチェック: 「ユーザー数100万人」「ARR3億」という話を、プレスリリースやIR情報で確認できるか検証する
面接で「数字を教えてください」と聞いて嫌な顔をされたら、それ自体がアウトだ。
まとめ:スタートアップ転職は「覚悟の量」で決まる
スタートアップ転職のリスクとリターンを正直に書いてきた。結論をまとめる。
- リスクは本物。倒産・制度未整備・年収変動は現実に起きる
- リターンも本物。年収・成長速度・市場価値は大手より上がりやすい
- SOは「あればラッキー」。固定給ベースで生活設計を立てること
- 「倒産しても食える」スキルが先、スタートアップ転職は後
私は年収570万のWeb系→890万の大手製造業→1250万のスタートアップと転職を重ねた。スタートアップへの転職は「正解だったか」と聞かれれば、今のところ正解だと思っている。ただ、それは事前に徹底的に調べて、リスクを計算した上で動いたからだ。
勢いで飛び込むのではなく、数字と事実を見て判断してほしい。転職の最終判断はご自身でお願いします。
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