転職と住宅ローン審査の関係。勤続年数はどこまで影響するのか?

住宅

住宅購入を検討している人にとって、転職と住宅ローン審査の関係は大きな関心事ではないでしょうか。一般的には「転職直後は住宅ローンが通らない」と言われますが、実際には金融機関や個々の条件によって結果は変わります。

私自身、30歳で年収2000万円(会社員として1300万円、副業で700万円)を得ており、資産も3000万円ほどあります。

配偶者は医師という状況で、医局の人事によって1年ほどで病院を転々と移り渡る状況でした。かくいう私も30歳にして転職を2回経験しており、1社1社の職歴は長い方ではありません。

そんな私たち夫婦でも都心で1億円を超えるマンションを購入しました。本記事ではその経験を交えながら、転職と住宅ローン審査の実態について説明します。

住宅ローンと転職の関係 ― なぜ審査に影響するのか?

国交省が行なった民間住宅ローンの実態に関する調査をもとに、住宅ローン審査で何が重視されるか確認してみます。以下の5点が重視されていることがわかります。

  • 完済時と借入時の年齢
  • 健康状態
  • 年収
  • 勤続年数
  • 返済負担率

私たちはお金を銀行から借りるので、銀行からしたらちゃんと返してもらわないと困るわけです。

住宅ローンは「35年間で1億円の借金返します!」と銀行にお願いしているようなものなので、銀行は「おめえウチから1億円借りるんだからちゃんと返せるんだろうなあ?」というのが気になるわけですね。

なので、銀行にとって若くて、ちゃんと働いていて、収入に対して返済額が高すぎない人であれば、この人なら返済できるだろうと評価をして住宅ローンを融資してくれるわけです。

金融機関が重視する「勤続年数」とは

この「ちゃんと働いていて」というのが勤続年数であったり年収の条件に当たります。

例えばいろんな会社を転々としていたり、職についていない時間が長かったりと、勤続年数が短い人がいたらどうでしょう。「この人この先もしっかり働いてお金を稼いでくれるんだろうか?」と心配になりますよね。逆に1つの会社に長く勤めている人であれば、それだけ今後も同じように働いてお金を稼ぐことができるという実績になります。

銀行の住宅ローン審査でも同じで、勤続年数という実績が基準の一つになっているのです。目安としては1年以上が望ましいとされますが、実際には1年未満であってもしっかりとした収入証明があれば通過するケースも多いです。

転職直後が不利とされる理由

とはいえ、転職直後は住宅ローンの審査では不利になりがちです。

給与が安定して支払われるか、新しい職場で長く勤務できるかを金融機関が判断できないためです。

特に、

  • 転職して半年以内
  • 全く異なる業界への転職で、0からのスタートの場合

だと審査通過の難易度は上がります。半年未満だと安定してお金を稼ぐことができるか判断できないこと、未経験への転職だと、今後も何かあるたびに転職を繰り返し収入が不安定になると判断されてしまうためです。

例外があるケース

一方で、転職直後でも住宅ローン審査で問題なしと判断されるケースもあります。

  • 医師、弁護士などの士業
  • 同一業界内での転職で収入が伸びている場合

などです。士業はそもそも収入水準が高いので、転職直後であっても金融機関からの評価に影響しないことが多いです。

また普通のサラリーマンであっても、同一業界内の転職で年収がアップしている場合はスキルアップによる転職と見なされ、転職直後でもプラスに評価されることも増えてきているのです。

転職直後だからといって、一概にNGであるわけではないので注意しましょう。

住宅ローンを組むのは転職前と転職後どちらが得か?

住宅購入も転職も人生にとっては大きなイベントです。できればそれぞれタイミングをうまく調整したいところですが、そう上手くいかないのもまた人生です。

私も家を買うつもりは元々なかったのですが、ふとしたきっかけで購入することになりました。

もしかするとあなたも転職した直後に自宅を購入することになるかもしれません。ここでは、住宅ローンを組むとしたら、転職前と転職後どちらにするのが良いのかお話ししたいと思います。

住宅ローンを転職前に組むメリットとデメリット

転職前にローンを組む最大のメリットは、勤続年数が安定的に評価されるため審査が通りやすいことです。今まで積み上げてきたキャリアという実績が評価され、給与や雇用が安定していると見なされれば、融資条件も有利になりやすいです。

一方で、転職前にローンを組む時のデメリットは、現在の収入でローン審査を受けなければいけないことです。

最近は賃上げも増えてきていますが、とはいえ日本ではまだ年功序列な文化が残っており、一つの会社に長く勤めていても収入が上がりにくいのも事実。

転職はうまく行うことで大幅な年収アップを狙うことができます。年収が高い方が住宅ローン審査では有利になるため、転職前に住宅ローン審査を受けてしまうとその年収アップの恩恵を受けられません。

転職後に住宅ローンを組むメリットとデメリットは?

転職後にローンを組むメリットは、新しい職場での収入でローン審査をすることができる点です。転職で大幅に年収アップが実現できていれば、融資してもらえる額も大きく変わります。

例えば私は直近の転職で年収が890万円から1250万円と360万円も年収を上げることができました。住宅ローン融資額の目安は年収の5〜7倍と言われています。私がもし転職前だったら4500万円〜6200万円ほどのローンが限度でしたが、転職後にローンを組んだ場合は6200万円〜8700万円と融資目安が大きく増えることがわかります。

一方で、転職後にローンを組む場合は勤続年数がネックになることも。転職直後2〜3ヶ月ではどれだけ条件がよくても審査は難しいでしょう。ただし、キャリアアップによる転職ということが金融機関にアピールできれば、転職半年後〜1年未満でも住宅ローン審査に通ることは十分にあり得ます。

大切なのはその転職でキャリアアップができているか、年収アップができているかということ。そうでない転職の場合は住宅ローン審査でマイナス評価になりかねないため注意が必要です。

転職直後・1年未満でのローン審査は可能か?

転職直後はNGとされる理由

半年未満での転職直後は、金融機関が返済能力を判断しにくいため、基本的に審査は厳しくなります。転職後2〜3ヶ月では審査OKの可能性は限りなく低いでしょう。転職直後は銀行からの信用が低い状態なのです。

ただし必ずしも不可能ではなく、1年未満でも通過するケースはあります。特に同業種への転職で、収入がアップしている場合などは評価されやすいです。

転職後、半年〜1年ほど経ってから住宅ローン審査に申し込むことをお勧めします。

他の収入源で審査に申し込むことも可能

副業などで他に継続的な収入源がある場合は、転職直後であっても住宅ローン審査に通る可能性はあります。

例えば私の場合は副業をかれこれ5年ほど続けており、一定の期間安定した収入源としてカウントすることができます。業務委託として副業をしている場合でも、数年にわたる実績があればそれは立派な収入として金融機関に評価されるのです。

転職「後」でも審査に通る条件とは

住宅ローン審査時に重視される条件は次のようになっていました。

  • 完済時と借入時の年齢
  • 健康状態
  • 年収
  • 勤続年数
  • 返済負担率

確かに転職後は勤続年数が短くなってしまいますが、勤続年数は審査の条件の一つにすぎません。転職直後であっても、他の条件でカバーすることができれば住宅ローン審査に通ることは十分に考えられます。

重視される年収と返済負担率

勤続年数以外に大切なのは年収と返済負担率です。

たとえ勤続年数が10年ほどあっても、年収の10倍近い住宅ローン、たとえば年収1000万円の人が1億円のローンを組むことは難しいです。

逆に、勤続年数が短くても年収が高かったり返済負担率(年収に占める返済額の割合)が適正であれば通過しやすいと言えます。一般的には年収の5〜7倍程度がローンの限度額で、毎月の収入に占めるローン支払い率が25〜35%以内が目安とされています。

私が住宅ローンの審査をした時は今の会社で勤めて1年半ほどでした。妻の場合は職場が変わって8ヶ月ほど。勤続年数という条件ではいまいちでしたがペアローンにすることで返済比率を下げ、無事ローン審査に通ることができました。

具体的には私の年収が2000万円、妻の年収が1600万円。それぞれペアローンで7500万円と4000万円を借り入れました。二人の返済比率は15〜20%程度となっており、住宅ローン審査を通過する上で重要な条件だったと感じています。

住宅ローン審査でも評価されやすい転職とは?

転職後でも「同業種での昇格」「年収増加」「企業規模が大きくなった」などポジティブな転職は審査に有利です。私自身も転職で年収が大きく増加したため、勤続年数の短さをカバーできました。

あくまでも勤続年数は住宅ローン審査の条件の一つにすぎません。他の条件をよくしていくことで、転職後でも住宅ローン審査に通ることは十分に可能だと言われています。

審査中の転職は絶対ダメ。再審査で取り消しになる可能性も

住宅ローンは、簡易的な情報をもとに行う事前審査、収入書類や公的書類も提出して行う本審査、審査に通って契約をしたのちにお金が振り込まれる融資実行、と3つの段階があります。

審査開始から融資実行までは、審査で申し込みをした情報を変えてはいけません。

たとえば審査時に出す情報には名前、勤務先、居住地などがあります。

この間に転職してしまうと勤務先の情報が変わってしまうため、最初から全ての審査をやり直す再審査の対象になってしまいます。本審査に通っていたとしても融資実行前に転職してしまった場合も同様で、再審査が必要になります。最悪の場合、再審査でローンの承認が降りず、住宅ローン融資が受けられないなんてことも。

ちなみに、転職以外でも結婚などで苗字が変わってしまう場合や、(あまりないですが)転勤になり居住地が変わってしまう場合なども再審査の対象となってしまいます。

そのため、住宅購入と転職や結婚といったイベントを同時期に進める場合は特に注意が必要です。

住宅ローン融資後に転職は可能?ペナルティは?

住宅ローン審査中ではなく、審査が完了しローンの契約を済ませ、融資が実行されたあとはどうでしょうか?

結論から言うと、ローンの融資が実行されたあとは自由に転職して問題ありません。転職しても基本的には金融機関に報告する義務もありません。転職したことでローンの一括返済を求められるといったペナルティを受けることもありません。

ただし転職によって収入が減ってしまい、返済が厳しくなってしまうということは避けなければいけません。住宅ローン返済中であればより年収面での条件を厳しく設定し転職することが重要です。

もし不安がある場合は、金融機関に正直に相談したほうがトラブルを避けられます。

実体験:転職1年半後に都心1億円超の物件を購入した話

私の場合、転職から1年半後に都心で1億円を超えるマンションを購入しました。妻とのペアローンを組んだのですが、

  • 年収2000万円(会社員給与+副業収入)があった
  • 副業収入は青色申告を行っており、確定申告書や納税証明書を提出した
  • 妻も転職後8ヶ月ほどだったが、医師で安定した収入があり返済比率を低めに設定した

といった条件でした。会社員の給与だけではギリギリな感じの住宅ローン額でしたが、副業収入もフルに評価してもらうことができ、無事審査に通ることができました。また妻は転職後8ヶ月ほどでの審査でしたが、医師で収入が安定していることがプラスに働きました。

ただし、転職直後だと準備をしないといけない書類も多いため、時間に余裕を持った準備が必要です。具体的には

  • 過去3年分の源泉徴収票と確定申告書
  • 直近3ヶ月分の給与明細

が余分に必要でした。転職していると、退職済み企業の源泉徴収票は再発行できない場合があります。過去に在籍していた給与明細や源泉徴収票といった書類はしっかり保管しておきましょう。

私も妻も勤続年数が長い方ではなかったため住宅ローン審査は心配だったのですが、無事通過することができました。

「勤続年数が短いから無理」と諦める必要はなく、審査で重視される他の条件をしっかり整えておけば、十分に審査に通る可能性があると感じています。

転職と住宅ローンの両立を成功させるための戦略

とはいえ、転職と住宅ローン審査が重なってしまうこともあるでしょう。私がオススメするコツを紹介します。

  • 転職前に借りたいなら勤続年数を武器にする
  • 転職後なら半年以上は勤続実績を積む。副業収入を利用したりペアローンを活用して返済比率を下げる。
  • 金融機関ごとに条件が違うため、複数の銀行に本審査の申込を行う
  • 書類の準備を徹底する(確定申告・源泉徴収票・給与明細など。退職済みの企業分も残しておく)

まとめ

転職と住宅ローン審査は密接に関係しますが、転職したら住宅ローンは通らないというのは誤解です。重要なのは、金融機関が納得できる返済能力を示せるかどうかです。

私のように転職後1年半でも審査に通るケースは十分にあります。勤続年数に不安がある方も、正しい準備と金融機関選びをすればチャンスは広がります。

もし転職と住宅ローンのタイミングで悩んでいるあなたの参考になれば幸いです。

このブログでは住宅購入や転職などについて、私の実体験をもとにした記事を公開しています。他の記事もぜひご覧ください。

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